豆知識① 皮膚

リハビリにおいて接触刺激は重要になります。接触刺激を考える上で”皮膚”は欠かせない要素です。今回改めて調べてみました。

「皮膚」について簡単にご紹介します。

皮膚の受容器と機能

皮膚の受容器と機能

皮膚は人体最大の臓器として、外界と身体を結ぶ重要な役割を担っています。触覚、圧覚、痛覚、温度覚など多様な感覚を司る受容器が分布し、身体部位によってその密度や機能が大きく異なります。

皮膚の感覚受容器の種類と特徴

触覚・圧覚受容器

  • マイスナー小体:軽い触覚、振動を感知
  • メルケル盤:持続的な圧刺激を感知
  • パチニ小体:強い圧覚、振動を感知
  • ルフィニ終末:皮膚の伸びを感知
  • 毛包受容器:体毛の動きを感知

痛覚・温度覚受容器

  • 自由神経終末:痛みを感知する侵害受容器
  • 温度受容器:温覚・冷覚を感知
  • 特徴:全身に広く分布、順応しにくい

有毛部と無毛部の違い

特徴 有毛部(腕、脚、体幹) 無毛部(手掌、足底、指先)
主な受容器 毛包受容器、触覚盤、パチニ小体、ルフィニ終末 マイスナー小体、メルケル盤、パチニ小体、ルフィニ終末
特有の受容器 毛包受容器、C触覚線維 マイスナー小体、メルケル盤
感覚の特徴 体毛の動きや振動、広範囲の刺激を感知 細かな触覚や圧覚、表面の変化を高精度に感知
角質層の厚さ 薄い 厚い
主な役割 体表面の広範囲監視、社会的触覚 精密な触覚識別、物体操作

身体部位による受容器分布の違い

高密度分布部位

  • 指先・手掌:物をつかむ、操作する、質感を感じる
  • 口唇:食物の温度や異物の侵入を察知
  • 足底:歩行やバランス保持、地面との接触感知

これらの部位では、細かな触覚情報が必要なため受容器が高密度に分布しています。

低密度分布部位

  • 背中・殿部:広い面積の一般的な感覚検知
  • 体幹・四肢近位:全体的な環境変化の検出

受容器密度は低めですが、姿勢制御や環境変化への対応に重要な役割を果たします。

順応速度と機能への影響

速順応型受容器

例:マイスナー小体、パチニ小体

  • 持続的な刺激にすぐに慣れる
  • 振動や物体の動きを敏感に検出
  • 表面の変化や動的刺激の識別

遅順応型受容器

例:メルケル盤、ルフィニ終末

  • 持続的な刺激を長く感じ続ける
  • 圧力や皮膚の伸びを検出
  • 物の形や硬さの認識

日常生活での具体例

  • 腕時計の装着感:最初は強く感じるが、速順応により慣れる
  • 物の滑り検出:速順応型受容器が動きを素早く感知
  • 持続的な握力:遅順応型受容器が圧力を継続監視
  • 痛みの持続:痛覚受容器は順応しにくく、危険を継続警告

皮膚の基本機能

保護作用

機械的・物理的外力、化学刺激、微生物、紫外線から身体を保護し、体内からの水分喪失も防ぎます。

感覚機能

触覚、痛覚、温冷覚、かゆみなどの感覚を受容し、外界の情報を脳に伝達します。

体温調節

発汗や立毛筋の収縮によって体温を調節し、体内環境の恒常性を維持します。

免疫機能

ランゲルハンス細胞などの免疫細胞により、外来異物の侵入を感知し免疫応答を開始します。

皮膚の進化史

主要な進化段階

約3億6千万年前(デボン紀後期)

両生類の陸上進出:角層(角質層)を獲得し、水分蒸発防止と紫外線・微生物からの保護機能を獲得。陸上生活が可能となりました。

爬虫類への進化

強固なバリア機能:より強固でバリア能の高い角層が進化し、乾燥した環境への適応が進みました。

哺乳類への進化

保湿機能の獲得:毛や乳腺の発達とともに、柔らかく保湿性の高い角層が出現。水分保持能力が大きく向上しました。

霊長類・ヒトへの進化

機能の高度化:体毛の減少、表皮と真皮の厚化、弾性やハリの増加など、より高度な皮膚機能が進化しました。

皮膚と外部環境の相互作用

多層防御システム

皮膚は単なる受動的なバリアではなく、以下の能動的機能により外部環境と相互作用します:

物理的バリア

角質層の三重防御層(pH勾配)により、1日約500mlの水分喪失を防ぎ、UVBを98%吸収します。

感覚ネットワーク

5種類の感覚受容器が1秒間に最大1000個の信号を脳へ伝達し、環境変化への即応を可能にします。

免疫監視

ランゲルハンス細胞が病原体を捕捉し、24時間以内に免疫応答を開始します。

生化学的適応

皮脂膜(pH4.5-6.0)が抗菌ペプチドを分泌し、微生物叢のバランスを調整します。


まとめ

皮膚は、進化の過程で獲得された高度な機能を持つ複合器官です。身体部位ごとに最適化された感覚受容器の分布、有毛部と無毛部での機能分化、順応速度の違いによる情報処理の役割分担など、精巧なシステムにより私たちの日常生活と生存を支えています。

現代の研究により、皮膚の角層pH勾配や免疫機能、環境適応メカニズムなど、新たな機能も次々と解明されており、皮膚科学は今後もさらなる発展が期待される分野です。

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